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手の届く距離で(5)
4.


 厄介ごとを避けようと思うときに限って、面倒は向こうからやってくるものである。




「何だか騒がしいわね」

「人だかりが出来てるみてーだけど・・・何だ?」

 馴染みの公園に差し掛かったところで、大きな人だかりに気づいたメイルは首をかしげて背伸びをし、その中心を覗こうとしてみる。
 デカオもまた訝しげにしていたが、残念ながら子供の身長では大人たちのつくる壁を越えることは叶わず騒ぎの原因はわからなかった。
 こんな朝も早い時間から平和なはずの公園で謎の集団。
 新聞記事の様な大事にはなりそうにも無いが、退屈している子供たちにとっては十分に魅力的な題材だ。

「あ、まって。少し人が途切れる・・・」

 やいとが指す方向を見ると、確かに人の波がやや薄い部分があり、そこからわずかにだが奥の様子が垣間見える。
 興味津々と覗き込んでみると、果たしてそこには。

「あれ・・・? 光くん、よね?」

「えっ・・・ほんとだ」

「何やってんだ、あいつ」

 遠目ではっきりとはわからないものの、特徴的な青いバンダナはここからでも十分目立つ。
 かなり大きな声で話しているらしい。離れた場所にいるメイルたちのところにも、内容までは聞き取れなくても声は届いており、その騒ぎに散歩をしていた人々が何事かと集まっているようだった。

「なにやってんのよ、ほんと」

 呆れたようにやいとがため息混じりに呟く。
 しかし逆にここで会えたのは好都合でもあったので、3人は人込みに押し流されないよう気をつけながら、その輪の中へと入っていった。




***




「うわあ、やっぱり完全に見つかってるよ。どうしよう・・・兄さん」

 真っ直ぐにこちらへ近づいてくる馴染みの顔をこっそりと伺いながら、小さな声で隣りの人物に策を尋ねる。
 別に2人ともやましいことは何もしていないのだが、あのメンバーが顔を揃えればきっとトラブルを起こさずにはいられないだろう。
 今までの経験から、それははっきりと断言できた。

「どうしようって言われても・・・逃げるわけにもいかないだろうし。ここは覚悟を決めたほうが」

「ううう、そうだよなぁ~」

 遠い目をして笑う彩斗の声にはすでに諦めが混じりつつあって、熱斗は頭を抱え込みながら、けれど今からでもどこかに身を隠せないものかと悪あがきする。
 ・・・が。

「こんなところでどうしたのよ、熱斗?」

 今更顔を隠そうが、もう手遅れの様で。
 そもそもあれだけしっかりと目が合ってしまっていた相手からどう逃れようというのだろうか。気がつけば、メイルたちは既に熱斗たちの目の前へたどり着いていた。
 心の中で偶然の神に文句を言いつつ、ここまで来ては仕方が無いと腹を括った熱斗は、引きつった笑いのままとりあえず挨拶を返した。

「や、やぁ。メイルたちこそ、こんな朝から皆でどうしたんだよ」

 言外に「どうしてこんなとこにいるんだ」という気持ちが混ざった発言になってしまったが、それにしたってこれだけ朝の早い時間、しかも今日は日曜である。
 学校も無いのに何かあったのかと感じてしまうのは自然なことだろう。

「なに言ってるの」

 しかし、返ってきたのは呆れたようなため息。

「へ??」

 思わず聞き返すと、続けてデカオからも「すっかり忘れてやがるぜ」という声が聞こえてきた。
 先ほどまで大勢いた野次馬たちは、2人の言い争いが止まったあたりで次第に散り始めている。そして今度は変わりに、馴染みの級友たちに囲まれるかたちになって、熱斗と彩斗はベンチに座り彼らを見上げるようにしていた。
 それは誤解すればカツあげでもされているのかと思われそうな図式であったが、その囲んでいる人物のうち2人が可愛らしい女の子であれば、そんな思いを抱く者も居ない。
 会話の内容も普通に友達同士という感じで、別段変わったところは無かった。
 それを感じた周囲の通行人たちは、興味を失って立ち去り、公園は普段どおりの休日の風景へと、平穏を取り戻していく。
 だが、熱斗たちの平穏はそう簡単に戻りはしない様で。

「そうだろうと思ったから、迎えに来て正解だったわね」

 両手を腰にあてて、小さな身体を精一杯大きく感じさせるおさげの少女・・・やいとの発言に熱斗はさらに首をかしげた。

「ねぇ熱斗・・・もしかして、夕べ送ったメール読んで無いの?」

 あまりに事情が通じていない様子を感じたメイルが確認するように、声をかける。
 その言葉に「あっ」と声を上げたのは、話しかけられている熱斗当人ではなく、大人しく目立たないようにと隣に控えていたはずの彩斗だった。
 今までは熱斗にばかり気をとられていた3人は、そこで始めて隣に座っていた彩斗に注目する。
 ここに来た当初から、熱斗に連れがいることは3人とも気がついていた。しかし、何故か言葉も無くずっと俯いていたため、特に話しかける機会があるわけでもないデカオたちは、まず熱斗に話しかけていた。
 けれど驚いた拍子に跳ね上げられた顔を見た瞬間、彼らは一斉に言葉を失うことになる。
 中でもメイルは目を見開き、信じられないという顔で固まっていた。

「あ・・・」

 その反応を見て、彩斗はようやく自分がした失敗に気づいたのだった。

 本人からして、そっくりだと感じた互いの外見。
 彼らにしてみれば、隣に座っていた人物が熱斗と瓜二つの顔をしていたのだから、それは驚いたことだろう。
 そしてメイルはひと目で、その人物が誰であるのか気づいたに違いない。
 現実にはありえないことであっても、彩斗の存在を知っている彼女であれば、目の前の人物と彩斗を結びつける可能性は容易に予想できることだった。

 それから熱斗がとった行動は早かった。
 まだポカンとショックから抜け出していないデカオたちに見えない角度から、メイルに目配せだけで意思を伝える。
 まっすぐで真剣なまなざしを受け止めて、メイルもそれは声に出してはいけないことなのだと感じ取ってくれた様で、小さく頷いて了解を表した。
 言葉が無くても十分に熱斗の言いたいことを汲み取ってくれたらしい。
 彼女がこの件に関して理解者であり、協力者で本当に良かったと熱斗は心から思った。
 昔から隣同士のためか桜井家とは家族のような付き合いがあった。メイルと熱斗は幼馴染だが、兄弟のように育った部分もある。だからこそ、こんなときにすぐ熱斗の気持ちをわかってくれるのだろう。

「メール? 読んで無いけど・・・」

 先のメイルの言葉に返して、熱斗は何でもない風に装ってみせることにした。
 彩斗のことは聞かれたら紹介すればいいと、あえてこちらから下手にとり繕うことはしないでおく。するとメイルも熱斗の会話にあわせて頷いた。

「やっぱりね・・・みんなでデンサンシティのネットバトル大会に参加しましょうって、メールを夕べ送ったのよ」

 彼女の説明を聞いて、ようやく熱斗にも事情がわかってくる。
 メールは自分のもとへは届いていなかった。何故ならば、夕べというとロックマンはメンテナンスと称して父に預られており、そして今朝からは隣にこうして実体化したロックマン・・・つまり彩斗がいるわけだから、当然PETのメールなど見る暇などない。

「ごめん、メイル。実は夕べからロックマンは定期メンテナンスでパパのところでさ・・・」

 嘘ではなかった。
 微妙に真実も語っては居ないが。

「そうだったの。電話すれば良かったわね、返事が無いからもしかしてと思ってたのよ」

 そして振り返り、デカオたちに「ごめんなさい、私の連絡ミスだったみたい」と説明してくれる。
 デカオたちはまだ混乱している様子だったが、メイルが普段どおりに振舞っているのを見ているうちに、ようやく落ち着きを取り戻してきたらしい。
 そこでやっと、彼らの口から「そっちの人は?」という疑問が投げかけられた。
 熱斗が今日の予定を知らなかったことよりも、気がかりは隣の人物へすっかり移っている様子が見て取れる。
 熱斗と彩斗は小さく頷いて示し合わせると、最初に打ち合わせをしていた通りのシナリオで最後まで通すことにした。メイルが協力してくれることが決まった時点で、説明をする上での問題はなくなっている。
 きっかけがつかめれば後は簡単なものだ。
 彩斗は、真実と嘘を上手く混ぜながら彼らに自己紹介をしていく。

「俺のひとつ上の従兄弟なんだ」

「初めまして、光彩斗です。熱斗の・・・同級生?」

 最後に疑問符をつけたのは、やいとがひとまわり年下のためだ。
 その視線を感じたやいとは初対面の頃に何度か見た外向けのつんとした顔で、短く「そうよ」と返事をした。
 彼女らしい立ち振る舞いに、普段の性格を知る熱斗は苦笑して、つられて笑いたくなった彩斗は何とか押さえる。初対面の彩斗が笑う場面ではなかったからだ。

「週末の連休で遊びに来てるんだよ。このあたりに来るのも久しぶりだから、道案内しながら散歩してたところ。ね、彩斗兄さん」

 同意を求めるように名前を呼び、それに彩斗もにっこりと微笑で頷き返す。
 そんなやり取りがとてもくすぐったくて、熱斗は浮き立つ気持ちが不自然に顔に出てしまわないようにと意識しなければならなかった。
 こうして人の前で彩斗のことを「兄」と呼べることが、これほど嬉しいのかと実感する。
 普段はこうして同じ目線で立つことはもちろんのこと、周囲に彩斗の特異な事情を広めるわけにもいかないため、お互いは「兄弟」として呼び合うことを戒めていた。
 だからこそ、こんな風に気兼ねなく自然に名前を呼んでいる自分の声に不思議すら感じてしまうのだろう。

「なるほどー、従兄弟かぁ」

 従兄弟と言われて、やいともデカオも納得したような顔になった。
 まるで双子みたいにそっくりだと感じたが、血の繋がりが濃い従兄弟同士で、年齢も近いとなれば良くある話だ。最初はびっくりしたものの、説明されれば「なんだそうだったのか」という種明かしだった。
 もちろんそれは事実とは違っていて、彼らが感じた通りまさに2人は双子の兄弟なのだが。今のところメイル以外は知らない事情である。

「みんなはネットバトル大会だっけ? 悪いけどロックマンが居ないし俺は・・・」

 今回はパス、と断ってこの場をきり抜けようと思っていたのに。
 今日はとことん運命に見放されていると感じたのは続いたやいとの言葉で。

「大丈夫よ。詳細を聞いてないだろうけど、今日のネットバトルは特別ルールなの」

 にっこりと女神のように微笑む少女は、有無を言わさぬ迫力で。こんな面白いネタは逃さないわよと細められた可愛らしい目が語っていた。
 やいとに捕まって逃げられた者はいまだ居ないのではないだろうか。
 お嬢様の権力に任せた横暴ではない。どちらかというと逆らってはいけないような強制力が、やいと自身にあるような気がするのだ。それを一言で魅力と片付けてしまえれば世の中とても平和に収まるのだが・・・。

「カスタムナビじゃなくて、今回は大会が用意した標準ナビを使って試合するらしいぜ。つまりオペレーターの実力がもろに出るってことだな!」

 デカオが付け加えて説明してくれる。
 聞いてみれば確かに面白そうな企画だった。普段はナビのカスタマイズ段階である程度の実力差が生じてしまう。戦略だけが全てではなく、日ごろからの全てがオペレーターとナビの戦力になるのだ。
 オペレーターの判断力と知識が試されるこのルールは、熱斗にとっても非常に新鮮に感じられた。

「へえ、面白そうだな」

 思わず本音で呟いてしまってから、慌てて口を噤む。
 聞き逃さずにそれを拾ったやいとはさらに深い笑みを浮かべて。

「そのルールが面白そうで誘ったんだもの」

 もちろん参加でしょう、と首をかしげながら覗き込んできた。
 確認しているように見えるが、ほぼ断定した口調だ。

「いや、でも・・・ほら、今日は彩斗兄さんも居るし、案内もしなくちゃだし・・・」

 苦しい言い訳を並べてみるが、やいとに敵うわけも無い。

「平気よ、この大会は誰でも参加資格があるの。一緒に出れば問題ないわ」

「「ええっ」」

 結局は一刀両断にされてしまって、今度こそ2人は揃って声を上げることになった。

「かまわないでしょう? せっかくこの町のこと見てもらうのなら、楽しいことをしなくちゃ、ね」

 つまり彩斗も一緒に大会で標準ナビを使用して戦うということだろうか。
 なんだかことが段々とややこしくなってきたなと思いながら、熱斗はもう一度、本日の運命を決めた神にこっそりと悪態をついた。









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コメント▽
ものすごくお久しぶりの連載更新です;;
拍手とかで続きを待って下さってた方々、ありがとうございます。そして遅筆で申し訳ありません(泣)
出来る限り初期メンバー総出で行きたいです。

update 2009/04/09
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