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世界に回帰する(23)
23.


 翌朝、食堂に現れたルークの顔色は相変わらず冴えないままで、テーブルを挟んだ向かいからそれを伺っていたガイは眉を寄せる。
 あれだけ強い薬に頼っても眠れないのか。それは本当に精神的な疲労だけが原因なのだろうかとも疑ってしまう。
 誰もがその不安は抱えているのだろう。最近は仲間たちの誰もが気づけば頻繁にルークに声をかけるようになっていた。

「今日も長距離の移動になりますが、体調は万全ですか?」

 ぐるりと取り囲んで座る面々に確認を取るジェイドの声は、主にガイとルークに向けられたものなのだろう。
 大丈夫とは言いがたい状況ではあるが、そんな個人的な我侭を言えるほど現状は甘くない。時間は無限に余っているわけではないのだ。
 こうしている間にも着実に、ヴァンの恐ろしい計画は進みつつあるのだから。

「おはよう、ルーク。昨日は良く眠れたのかしら」

「宿に戻ってきたらばたんきゅーで眠っちゃってるんだもんね。昨日はルークの好物のエビだったんだよー?」

「げ、マジかよ!?」

「アニスちゃんがルークの分まで全部食べてあげたからねっ」

 やはり昨日はルークも食事を取らず、眠ってしまったらしい。
 からかうアニスの声が明るく響き、ようやく食卓に和やかな雰囲気が戻ってくる。

「大丈夫よ、ちゃんと貴方の分もあるから」

 好物を食べそびれたことにショックを受け打ちひしがれるルークの姿に、ティアが頬を染めながら苦笑して立ち上がる。
 そして目の前の大皿からルークのためにとサラダを取り分けていった。

「わ、ティア! それくらい俺自分で出来るっての」

「いいのよ、ほら」

 慌てて小皿を取り上げようとするルークに、ティアはエビを多めに取り分けた小皿を押し付けると、今度はおかずの大皿へと手を伸ばす。
 落ち込んでいるルークに少しでも何かしてあげたいという気持ちの現れなのかも知れないが、傍から見れば子供の世話を焼くお姉さんのようで、妙にほのぼのとした空間が出来上がっていた。

「ルークも、問題はありませんか?」

「あ? うん、平気だ」

 再度確認を取ったジェイドに対してルークは笑顔で大丈夫だと答える。
 ガイはそれを黙って見つめたまま、フォークの先で転がしていたトマトの欠片を口へ放り込んだ。

「ガイ」

 そうしていると小さく囁くような声で呼びかけられ、驚きにフォークがかしゃんと微かな音をたてて皿と触れあう。音に気づいてルークがこちらを見るのではないかと一瞬ひやりとしたが、ジェイドとの会話に気を取られている子供が振り返ることは無かった。
 ホッとするのと同時に、けれど過剰なほどにルークを避けている自分をまざまざと実感して憂鬱が増す。

「ナタリア・・・」

 振り返れば、呼びかけた少女がいつの間にかすぐ隣に座っていた。女性恐怖症を持つガイとしては、その距離は少々近すぎる感もあったが、それはナタリアなりの抗議も含まれていたのかも知れない。ずいと更に身を乗り出されて背筋に冷や汗が伝った。
 声に相応しく、彼女の表情は厳しい。
 その目が何を語っているのか、言葉を聞くまでも無くガイには判りきっていた。

「ルークが何を欲しているか、判らない貴方では無いでしょう」

「判っているさ」

 そう、判っている。けれどどうにもならないこともあるのだ。
 口先だけなら幾らでも甘やかすことは出来る。けれど、ルークが本当に欲しいのはそんなものではない。
 真実。
 ガイの口から語られる真実を、ルークは求めているのだから。

「だが、俺はそれをあいつ与えてやれない」

 ルークが求めているものは、今まで以上に彼を傷つけるものでしか無い。
 だから、幾ら手を伸ばして欲されても、ガイはその問いに答えることが出来ない。

「真実を知れば、あいつは絶対に今以上傷つくことになるからな」

「それを決めるのは、貴方ではないのではありませんこと?」

「・・・・・・」

 毅然としたナタリアの表情は変わらずガイを真っ直ぐに見詰めている。
 その声色には咎める響きすら感じられるというのに、その目には怒りも蔑みも浮かんではいなかった。
 まるで懺悔を捧げる咎人のように光る金色の髪を見上げ、ガイは抑えなければ何かを叫び出しそうな唇を噛み締める。

「俺、は・・・」

「その真実をルークが知って、傷つくのを恐れているのは貴方の方でしょう、ガイ」

「・・・!」

「私たちは、自分の視点だけで彼を見て、彼のことを判ったつもりになっていたんですわ」

 そっと目を伏せるナタリアの視線の先には、アニスにからかわれながらパンをかじるルークの姿。
 楽しそうに談笑する今の様子だけを見ていれば、普段通りの彼に思えるのだけれど。

「価値観を押し付けないで。もっと、ルークの声に耳を澄まして下さいな。貴方にならきっと・・・私よりも、彼の思いが良く伝わるはずでしょう」

 ナタリアは何に気づいたのだろう。
 自分が、迷い、進むことを躊躇ううちに、彼女は何らかの答えを見出していたのだ。

(ルークの声・・・俺の価値観じゃなく、あいつの本当の願いは・・・)

 自分ならば、近しい人の裏切りを知れば傷つくだろうと思っていた。
 けれどルークは?
 本当に、隠されることを望むだろうか。
 周囲から遠ざけられ、目隠しをされて。それで守られているルークは、本当に喜ぶとでも言うのか。

「・・・すまない、ナタリア。目が覚めた」

 今まで目をそむけて、答えを先延ばしにしていても、結局選べる答えはただ一つだけだった。
 ひどく遠回りをしてしまったけれど。
 そうしなければ、多分一歩も進めない。

「お陰で決心がついたよ。――ルークときっちり話をつける」

 食べることに漸く集中しだしたのか、騒々しかった会話がいつの間にか途切れている。
 もうじきジェイドの口から出発の声がかかることだろう。
 スープの底に残ったニンジンの欠片をつつきながら苦い顔をしているルークを、そっと窺い見た。

(全く皮肉なことだな)

 彼の笑顔を守りたいと願って行動してきたはずなのに、ガイの行動は結果的に彼の笑顔を奪っていた。
 そのことに気づかせてくれた幼馴染の少女に、感謝の念を抱きながら。
 互いに避け続けているその間も視界から消えることは無かった赤い尻尾を、いとおしげに見詰め、微笑んだ。


end.

***
やっと進みそうな気配が・・・? ナタリアに夢見すぎですみません;


update 2009/04/09
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