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世界に回帰する(15)
15.


 神聖なる黄金の光。
 世界に満ちる、第七音素の恩恵。

 それは預言をもたらす存在で、世界の全てはそれによって円滑に営みを成り立たせている。
 けれど、どうしてだろうか。

「ルーク・・・」

 治癒術をかけられたときだって、こんなにこの輝きを畏れたことは無い。

「お前か、俺に煩く呼びかけてやがったのは」

 まだナタリアの手に助けられながら、アッシュは立ち上がり視線の先の同じ顔を睨みつけた。
 もう頭に響くローレライからの干渉は無くなったというのか、掠れていた声も元の力強さを取り戻して。彼に触れていた治癒術を放つ少女の手も、いまは輝きを消している。

「我の言葉は、直接伝えるには強すぎる故。この同位体の器を通して、空気を介し意思を伝えている」

 そのアッシュの挑むような問いには全く動じず、ルークの体を支配している第七音素の意識はただある事実だけを言葉で返した。

「なるほど、つまり空気・・・肉声で、こちらに話を伝えるためにルークと同調したわけですか」

「ええー、それじゃあ、いま話しているのはローレライってこと?」

 予測もしていなかった存在からのコンタクトに、一同は驚きを隠せない。
 確かに地殻に降り立ったとき、ローレライの声はユリアの血を受け継ぐティアの体を通して伝えられたことがあった。けれどあの時は一方的で不明瞭な声が送られてくるばかりで、このようにはっきりとした会話が成り立ったわけではなかったのだ。

「ローレライ、貴方は先ほど「流れに逆らいし者たち」と言いましたね」

 相手は巨大な音素の意識体だというのに、ジェイドはまるで普段ルークに話しかけるときと、何ら変わり無い口調で質問を重ねる。けれどローレライを意識していないわけではなく、背中から伝わるピリピリとした緊張感は強敵を前にした時と同じものだった。

「預言という定めに逆らいし者たち、汝らは時の流れを捻じ曲げた存在であろう」

 そして、ローレライから返った答えにガイが目を見開く。

「俺たちが未来の記憶を持っていることを、知っているっていうのか・・・!?」

 驚きのままに叫んだ声は、思った以上に地殻の空へ通って。
 自分の声の起こした残響を聞きながら、ガイは目の前の翠が深く揺れたことに続く言葉を途切れさせた。
 感情を持たずに話すローレライが、一瞬人の心を持ったかのように見えたからだ。
 まるで目の前にいるのはローレライではなくルークなのではないか、と錯覚して、瞬きを繰り返す。
 ほんの一瞬で、その揺らめきは幻のように掻き消えてしまったのだけれど。

「すでに定まった過去は、星の記憶に記されている」

 世界の未来は預言によって定められている。
 だとすれば、ローレライはこの歴史がどう終結するのかも、全て知っているのだろうか。

「ローレライ、この歴史を変えることは出来ないのか?!」

 自分たちが勝ち取った、預言の無い未来を。
 ルークの居ない・・・未来を。
 自分たちは変えるためにいまを進んでいる。

「預言は絶対のものでは無かった。それはかつての未来で汝らが示してみせたもの」

「けど・・・その未来は、俺たちの望むものじゃなかった!」

 ルークという犠牲と引き換えに守られた世界なんて、それでは意味がないのだから。
 無いものねだりだと言われても構わない。
 自分たちは全員、我が侭にただ一人だけを望んでいるのだ。

「・・・この世界が預言で縛られているのか、それは我の口から語ることではない」

 長くも感じられた沈黙を区切りとして、ローレライは確約とは言えない答えを口にした。
 答えを拒む・・・いや、星の記憶そのものとも言えるローレライには答えられないというのが正しいのだろう。
 未来を定める星の記憶を否定することは、彼自身の存在を無いものと言うのに等しい行為だから。

「自分たちで見定めろ、ということですね」

「人の子にしか、出来ぬことも多くある」

 ジェイドの言葉に、ローレライはゆっくりと頷く。
 この僅かな時間のうちに人らしい仕草を身につけたというのだろうか。最初に感じた無機質さは潜められ、最後の声は優しく笑ったのだということが、全員に伝わった。

「この器は、人の手で作られたためか、少々脆いようだ」

 輝きが最初に見たときよりもずっと少なくなっていて。ふと顔を上げるとローレライは、纏っていた光をゆっくりと拡散させる。
 これ以上の会話はルークの負担が大きいということだ。
 輝きが消える前に、ガイは駆け寄って支配から解かれ倒れこむ体を抱きとめた。

「・・・っ」

「アッシュ?」

 仲間たちの輪の中で、同じように立ち尽くしていたアッシュが僅かに眉を寄せる。
 最後にローレライからのメッセージを受けとったのか、彼は何かを言い返したようだったが、離れていたガイには聞き取ることは出来なかった。

「さあ、脱出しますよ。予想外に長居をしてしまいました」

 夢から覚めない気持ちの一同を、ジェイドが素早く現実へと引き戻す。
 ローレライの配慮か、障壁は時間を大分消費したはずなのに威力を弱めては居なかった。しかし時間は刻々と過ぎていく中、あまりゆっくりとしているわけにはいかない。

「考えるのは、ここを脱出した後です!」

 銀色に輝くアルビオールへと乗り込み、金色の世界を後にしたのだった。


 * * *


 雲を突き抜けて、数時間ぶりに仰いだ本物の空は目に染みるほど青く感じる。
 差し込んだ太陽の光は温かく彼らを出迎えて、アルビオールの駆動音が安定するとようやく生還の実感が湧いてきたのか、誰か一人が溜息をついて。そして次々に詰めていた息を吐き出した。

「帰って来た・・・のか」

「ほんと、マジもうだめかと思っちゃいましたぁー」

 ごうごうと風を切る音をあげながら、あれだけの衝撃を受けて良く機体が保ったものだと関心すらする。保護障壁があったとはいえ、一時は本気でもうダメかと思ったくらいだ。
 けれどそれなりの代償はあったようで、あちこちの外壁がミシミシと嫌な音を立てて軋んでいた。

「これは、一度シェリダンに戻った方が良さそうですね」

 流石にこの状態ではジェイドに言われるまでも無い。
 すでに行き先は飛行船のドッグがある音機関の町へと向けられていて。
 そしてこの作戦の直前に町を襲ったであろう惨劇を思い出し、帰還する喜びは静かに重い空気に包まれて彼らは無言で久しぶりの大地へと足を下ろした。

 はずだった、のだが。

「みなさん!・・・良かった、無事だったんですね!」

「ギンジさん!?」

 町の門を潜ると同時にガイたちを出迎えてくれた人物は、元々アルビオールのパイロットであった青年で。その思いのほか元気な様子にどう反応をしていいものか、相手の名を呼ぶことしか出来ない。
 その背後ではやはり町の若者たちが忙しそうに駆け回っている。まさかいまもまだ戦いが収まっていないのだろうかと、身を固くした彼らに、けれど続けられたギンジの言葉はもっと驚きの大きいものだった。

「色々と壊れてしまいましたから、皆で修復中なんです。全く、年寄りの冷や水だって言うのに全然聞いてくれなくて・・・」

 そう告げて、仰ぎ見る背後の建物はこの町の中心となる重要施設であり、そこで働く年寄りとなれば誰かは限られてくる。
 それぞれが、まさかと目を見張る中で。

「こらー! 帰って来たのなら、まずはわしらに報告をせんか!」

 あちこちに包帯を巻きながらも、大声を張り上げながら手を振り回している姿を見て、アニスが咄嗟に口元を覆った。
 隣を見れば、普段は見ることも無いだろう、赤い瞳が驚きを隠しもせずにぱちりと瞬く。

「歴史は・・・確かに、動いているのか」

 腕の中の温もりを確かめるように抱き寄せながら、ぽつりと無意識にもれた呟きは喜びに震えそうだった。
 ローレライの残した言葉を思い出し、それが示していた通りいま自分たちが見ている「変わった」未来に希望を見出す。
 けれど。

「触るな!」

 どん、と体に反動を受けてよろめき、ガイはどさりという鈍い音を聞いた。
 それは、しっかりと支えていたはずのものが腕の中から転がり落ちた音で。

「ルーク・・・!?」

 ガイの支えを無くして重力に従い地面へ叩きつけられたルークが、低く呻き声をあげる。
 蹲るその背中に慌てて駆け寄ろうとすれば、それは振り上げた彼の手によって拒まれてしまった。
 見上げてきた翠の双眸は薄い水の膜に揺らいでいて、もう一度「来るな」と拒絶の言葉を投げつけられれば、それ以上踏み出すことは出来なくなる。

「未来、て何のことだよ」

 しぼり出すような声がその短い単語を紡ぎだすと、ガイはルークが何を知ってしまったのかに気いた。

「ルーク・・・それはっ」

「説明しろよ、ガイ!」

 癇癪を起こした子供のように。地面に両手をついたまま、世界の全部を拒んで。
 睨みあげた彼の両目を見た瞬間、ガイは自分がルークにとっての「味方」の枠から外されたのだということを知り、言葉を失った。


end.

***
ガイたちの大失態です。子供は自分の味方か敵かを敏感に感じ取るので、一度信頼を失うとその警戒を解くのは容易ではありません。
一難去ってまた一難。そして世界の情勢も敵も待ってはくれないのです。


update 2009/04/09
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