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ハッピーバースデー2015

「二人とも、お誕生日おめでとう」

 パァンと軽やかなクラッカーの音が鳴り響き、祝福の声が耳をくすぐる。目の前には年の数だけロウソクの火が揺らめき、両側から一気に吹き消せば拍手の音がそれに続く。
 それを”モニタ越し”ではなく間近で見下ろすことに、未だ不思議を感じずにはいられない。

「ほらほら熱斗、慌てなくてもケーキはまだたっぷりあるからね」
「熱斗くん、ほっぺたにクリームがついてるよ」

 笑いながら指先ですくい取ると、子供みたいな扱いに照れたような顔を見せる。しっとりときめ細かい、美味しそうな生クリーム。それを少しだけ見つめてから、ボクはナプキンで指を拭いた。
 いくら人間と見間違うほどの精巧なつくりをしていても、コピーロイドはあくまでも機械。ものを食べるようには出来ていないため、ボクの席の前はお飾りのジュースが一個あるだけで後はぽっかりと空間になっている。
 対して、熱斗くんの前には食べきれるのかと思うくらいの大量の料理が並んでいた。
 ママがはりきってボクの分まで料理を作ってしまったことも、熱斗くんが二人分の量を引き受けてくれてることも、気付いてるけど何も言わない。
 注がれる無償の愛は、食べ物なんか無くてもボクの胸をいっぱいにしてくれる。
 ちらりと視線を隣に向けると、白いクリームで口元を汚して、弟はからりと笑った。




***




「はー、食った食った!」

 部屋に戻ると、流石に食べ過ぎたのか熱斗くんはお腹を抱えて寝転がる。
 勢いに負けて軋んだベッドを見やり、PETを手に取りながらボクは「行儀悪いよ」と注意した。

「別にいいじゃん、これくらい――って、もう帰っちゃうの?」

 充電完了のサインを確認していると、熱斗くんがびっくりして身を起こす。惜しむ声に苦笑して点滅するランプを見せれば、あっと納得したような顔になった。
 パーティーの間ずっと使っていたから、そろそろコピーロイドの稼働時間は限界だ。寂しがる弟を置いていくのは忍びなかったが、このまま電池切れを起こしては後々面倒なことになる。それがわかってたから、ボクは名残を振り切ってPETの電源をオンにした。
 じゃあねと軽く手を振って、開いた回線へと飛び込む。
 ゼロとイチの洪水が緑色の光となってボクを出迎え入れ、目を開けばそこはもう見慣れた電脳空間の中だった。留守番をしてくれていたプログラムたちが、ボクに気づいてオカエリナサイと寄ってくる。

「ろっくまんサンニ、ニモツガトドイテマスヨ」
「ボクに?」

 差し出された小さな白い小箱に、きょとんと目を丸くする。熱斗くんでは無くボク宛てに何かが届くのは珍しい。
 軽くスキャンをかけてから蓋をあけると、中に入っていたのは小さな苺のショートケーキだった。

「え、これって」
「あ、もう開けてくれたんだ?」

 頭上からの声に振り向く。

「それ、ママたちに協力して貰って作ったんだ。食べてみてよ」

 せっかくの誕生日なんだし、どうせなら一緒に食べたいだろ?
 そう言う熱斗くんの手にも苺のケーキが乗っていて。

「……まだ食べるの?」

 ぷっと噴き出して尋ねれば、オレの胃袋を甘く見るなと胸を張って答えられた。甘く見るというか、きっと彼の胃袋は現在さぞ甘いことになっているだろう。
 頂きますを一緒に言って、やわかなスポンジにフォークを刺す。
 噛み締めると苺の爽やかな酸味と甘めに作られたクリームのひんやりとした感触が、口いっぱいに広がった。
 「おいしい」ぽつりと漏らした感想に、熱斗くんが笑みを深める。
 食卓を囲んでいる時、きっとこんな味がするんだろうなと想像していたままのケーキ。ママの作るケーキって、こんな味なんだ。
 誕生日を共に祝って貰えただけでも十分に幸せなのに、こんな嬉しいドッキリを仕掛けられて、どんな顔をすれば良いのか判らない。
 もう一口食べてから改めて「美味しいよ」と伝えれば、熱斗くんは得意げに「だろ?」と返した。

「ママの味を再現するために、何度も味見したんだぜ」
「味見?」
「……あっ」

 どうも聞き捨てならない単語が混ざっていた気がして、問い返すと慌てたようにガタガタと逃げ惑う音が聞こえる。

「ねえ、熱斗くん」
「ひ、いやいや、今の間違い! 言い間違い!」
「どういうことか、説明してくれるよね?」

 説明、の部分を強調して言うと、ひときわ大きなガタンという音と共に頭をぶつけたらしい悲鳴が聞こえてきた。
 逃がすものか、洗いざらい吐かせてやる。

「――というわけデス」
「つまり、味見のために毎回パルストランスミッションシステムを使ってたってこと?」
「うん」

 ……呆れた。
 聞き出した真相はなんとも頭が痛くなることで。じろりと視線を向ければ、悪いことをしたという自覚があるのか、熱斗くんは居心地悪そうに身をすくませた。

「ナビとシンクロせずに精神体だけでネットワークに入ることの危険性は判ってるよね?」
「……うん」
「科学省の人には止められなかったの?」
「ワイリーにお願いしたら、良いって」
「……あの人は」

 深くため息を吐いて、恨み言を喉元でとどめる。
 何だかんだで熱斗くんが顔を出すと嬉しそうに研究の話を振ってくる元悪の総帥は、最近周囲から孫を可愛がるおじいちゃんのようだと噂されていた。

「どうしてボクに相談してくれなかったの」

 言ってくれれば良かったのに。そうしたらフルシンクロして、味見にでも何でも付き合ったのに。

「だって、そうしたら先にプレゼントの中身がばれちゃうじゃん」

 するとけろりとした顔でそう返されて、ボクは増した頭の痛みに呻きながらも、ボクのためにと頑張ってくれた気持ちもわかって複雑な顔になった。
 まあもちろん、その後で切々とネットワークの危険と防衛手段について夜通し語り聞かせたんだけどね。
 こんなの、小学校低学年で学ぶことなんだよ!
 とりあえず、しっかり反省して貰うまで、引き出しに隠したプレゼントのご開帳はお預けだ。





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コメント▽
2015年おたおめで呟いてた小話


update 2015/10/02
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