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鬼火(5) ※再録


「以前に使ったお経のデータ、消してなくて良かったなぁ」

 不要になったデータは削除してしまうのが普通なのだが、熱斗は部屋の中と同じくPETやパソコンの整理整頓をあまりまめに行わない。
 そのお陰もあってか、以前に悪霊ナビたちと戦った際に使用した撃退用ツールがPETの中に残っていたのだ。

「確かに、まさかまた使う事になるとは思ってなかったけどね」

 左右から迫るターゲットを両手に装着したスプレッドガンで打ち落とし、次のチップが転送される僅かな間でロックマンは肩をすくめてみせる。

「たまには熱斗くんの散らかし癖も役に立つってことかな」

「ぐ」

 ずばりと両断にするロックマンの鋭い指摘に、苦虫を噛み潰したような顔をしながら熱斗はポケットから新しいチップをスロットへ転送していく。

「おにいちゃんたち、頑張って!」

 出現した三日月形のソードを一振りすれば、周囲を囲んでいた黒い影はかき消されるように霧散した。

「次、行くぞロックマン!」

「うんっ」

 電脳空間に黒くうずまく気配がある。
 常であればウイルスたちを相手にしても戦いの緊張感くらいはあって当然のことだが、けれどロックマンが感じたそれは、もっとべっとりとして嫌なものに思えた。
 眉をひそめて、その気配を追う。
 ぐるりと取り囲むように動くそれらは、突然システムの中へと乱入してきた新たな存在に対して戸惑いと警戒心を強めているようだった。

「数で囲まれたら厄介だ。2ブロック先に細い通路があるから、そこに誘い込めるか?」

「わかった、熱斗くん」

 指示を受けて、それとほぼ同時にロックマンは地を蹴って駆け出す。
 熱斗の指示はほとんどタイムラグ無く、ロックマンへと入力されていた。
 いや、本来ならばそれ・・・ナビへのオペレーションは、音声として認識してから適切な処理を経て命令と受け取られるはずである。
 オペレーターが指示を出した直後にナビがすぐ反応するなど、通常であれば考えられない処理速度だった。
 熱斗とロックマンの間で行われる意志の疎通は、通常のそれより遥かにダイレクトなものなのだ。
 シンクロ。
 お互いの考えたことが、瞬時に通じ合う。
 信頼を築きあったオペレーターとナビの間に時折起きる現象と言われているそれを、熱斗とロックマンは呼吸をするかのように容易くやってのける。
 それは彼らが元々は双子というつながりの元に生まれた存在だからなのか。
 互いの考えていることが瞬時に通じ合い、そして相手を信頼して次の行動を起こす。
 数々の強敵を相手に彼らが立ち向かえた強さは、そこから生まれるのだ。

「おにいちゃん、あっちからいっぱい近づいてくるよ!」

「ロックマン」

 隣で背伸びをしてきょろきょろと辺りを見回していたユウコが、何かに気づくとそれをすぐに熱斗へと知らせる。
 その言葉を聞いて、熱斗はまたロックマンへと指示を出した。
 ユウコの気配に引き寄せられてくる者たちならば、逆にユウコが気配を察知することもできる。
 センサーにかからない特殊な敵と対等に戦うためにも、彼女の協力は心強い。

「バトルチップ、エリアスチール、スロットイン!」

 チップの転送を知らせる声に、青い影が発動に備え軽く姿勢を低くした。前後から挟み撃ちにしようと回り込んだ敵の動きを読んで、熱斗がその軍勢の向こう側へとロックマンを送りこむ。
 そうして空間を飛んだロックマンは、背後でたたらを踏む敵に両手で構えた必殺の一撃を打ち込んだ。
 ぴたりと息の合ったコンビネーション。
 敵の数は多いものの、2人にとって苦戦を強いられるような戦いではなかった。

「よし、このまま真っ直ぐ進んで・・・」

「おにいちゃんっ」

 戦いに有利な地形へと敵を誘い込むことに集中していたら、すぐ耳元で悲鳴に近い少女の声が熱斗を我に返らせる。

「気をつけて、あっちからも、来るよ!」

 ちらりと視線を走らせれば、ユウコの示した場所には通信パネルの制御系等を奪おうと仕掛けてきている一団がいた。
 まずい。
 ここはセキュリティの効いたアトラクションの中である。一般客のネットナビは管理者とは違い行動を制限されていて、非常用のコントロールパネルからしかチップ転送などの通信が行えないのだ。
 その唯一の通信パネルを敵に占拠される・・・つまり、この部屋からのアクセスを切断されてしまえば、熱斗はロックマンへチップを転送できなくなってしまう。

「くそっ」

 ロックマンへ素早く次のチップを送ると、熱斗は部屋の隅にある小さな銀色のパネルへと駆け寄った。
 システム側からの通信を遮断して、ウイルスが進入しないようにしなくては。
 けれど、あと一歩で制御盤に手が届くと思った時。

「ぅわあ!」

 PETのスピーカーから漏れた悲鳴に。
 一瞬、意識を取られた。

「おにいちゃん!」

 僅かな遅れは、この場合致命的なものとなる。
 ほんの指先ひとつ分の距離のパネルが鋭い閃光を放って、駆け寄った熱斗をもろともに飲み込んだ。


update 2012/07/29
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