スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


update --/--/--
backトップ > スポンサー広告 > 鬼火(3) ※再録 *
鬼火(3) ※再録


 前にも、そして後ろにも、果てしなく続くように思える薄暗い迷宮。熱斗は自分の居る場所を改めて確認するようにぐるりと視線を巡らせて、そして大きく溜息をついた。

「あー・・・完っ璧に、はぐれちゃったな」

「・・・みたいだね」

 ホルダーに収められたPETから相槌を打たれて、少なくともロックマンにも仲間たちの位置をすぐに把握できないのだとわかり、熱斗は再びがくりと肩を落とす。
 足元に開いた落とし穴に落ちて、気がついたらここに居た。
 怪我をするような構造ではないというやいとの言葉は正しくて、実際に熱斗はかすり傷ひとつ負っていない。
 穴の下は滑り台のようになっており、柔らかな素材の上を滑り落ちながら地下のこの場所まで運ばれてきたのだ。

「みんなのところに戻れないか、ロックマン」

 トレードカラーでもある青い色をした携帯端末を取り上げてモニターを上に向ければ、そこに見慣れた青いナビの姿が浮かび上がった。

「ここの管理パスワードがあれば、皆の居る場所をサーチすることも出来るんだけど」

「やいとじゃないと無理だよなぁ」

 ならば、彼女が管理コンピューターから手を回して自分たちを見つけてくれるのを待った方が良い。むやみに歩き回ればその分だけお互いを見つけ難くなるのだから。

「そういえば、いま何時頃なんだろう」

 気が付けば昼を食べてからずいぶん経っているような気がする。
 周囲を見回しても、施設内には時計が無いのだ。
 外を歩いている間は空が見えているのだから大して気にも留めていなかったが、こうして建物の中に入ってしまうと時間の経過もわからなくなってしまう。

「まだそんなに経ってはいないみたいだよ」

 さりげなく浮かべた熱斗の疑問には、すぐに答えが返ってきた。PETに内蔵されている時計の時刻をロックマンが確認したのだ。
 もちろんこうして個人用携帯端末・・・PETを使えば、時間など簡単に確認が出来るのだけれど、それでも目に入る範囲に時計が無いと、遊んでいる内に時間を忘れて夢中になる人も出てくる。
 おそらくそれが狙いなのだろうが。

「すごい徹底ぶりだね」

 感心したように響く声に、熱斗も同意するように頷いた。

「でも、熱斗くん。さっきのアレを放っておくわけには行かないよ」

「わかってるさ」

 ロックマンが気にしている「それ」は熱斗にもわかっていた。これが単純に迷子になっただけの話ならば、ここでやいとたちがやってくるのを待っていれば良い。けれど、事態はそれほど悠長に構えていられるわけでもなかった。

「ラップ現象・・・って言ってたけど、あれは明らかに電脳空間からの干渉だよ」

 断言した彼の言葉に、同じ予想を立てていた熱斗は「だよなぁ」と頭上にあるカメラのひとつを見上げる。
 幽霊というものを、熱斗もロックマンもそれほど怖いと感じたことは無かった。
 信じていないわけではない。
 なぜなら、彼らはいままでに何度も超常的な存在に出逢ったことがあるのだから。

「何かが、ここで悪さをしてるってことは確かだよな」

「うん」

 例えばそれが、悪性のウイルスによるものなのか。または、やいとの話の通り、霊と呼ばれる存在が引き起こしていることなのか。
 そのどちらにしても、実際に事件が起きていることを確認したからには、放置しておくわけにも行かない。

「まずは、近く・・・どこでも良いからプラグインできるところを探さなきゃな」

 熱斗はそう言いながら、暗い通路を慎重に確認しながら、ゆっくりと歩き出した。
 調べるためにもまずはロックマンをシステムの中にプラグインしなければならないからだ。
 安全のために各所にはメンテナンス用の端末が設置されているはず。

「俺の持ってるライセンスで入れれば良いんだけど・・・」

 市民から選抜されるオフィシャルへの協力者・・・市民ネットバトラーには、それぞれランクごとの権限が与えられている。熱斗が持っているのは、中でも最上級のSSSランクのものだった。
 そのライセンスひとつで世界中のどの場所へもほぼフリーで行き来することが可能なのだ。

「待って、熱斗くん!」

「えっ?」

 すると、突然PETから鋭い声で呼び止められて。踏み出そうとしていた足を、危うく下ろす寸前で熱斗は静止する。

「な、なんだよロックマン。脅かすなよな」

「熱斗くん、何か、居るよ!」

「ええ!?」

「ほら、前方・・・すぐそこに」

 薄暗くて熱斗にはまだ判らなかったが、PETの検索範囲に入った存在をロックマンはいち早く察知し、オペレーターへと注意を促す。
 ごくりと喉を鳴らして、熱斗はゆっくりと示された曲がり角へと目を凝らした。不用意には近づかず、まずは相手の姿を確認しようと、薄暗い通路にぼんやりと浮かぶ影を追う。
 そして確かにロックマンが言う通り、熱斗はそこに人影を見つけ出したのだ。

「チサオ・・・?」

 それは、想像とは違い小さな姿をしていて、思わず熱斗は思い浮かべた年下の子供の名を口にする。敵意があるものならば気配である程度気づけるはずなのだが、その相手から悪意を感じなかったのもまた、熱斗が声をかけた理由でもあった。
 もしかしたらやいとたちが自分たちを探しに来てくれたのかも知れない。そう思って、もう一度声を大きく呼びかける。

「皆、なのか?」

「おにいちゃん・・・?」

 けれど、その相手から返ってきた声はチサオのものではなく、小さな少女の響きに熱斗は驚いて息を呑んだ。

「おにいちゃん、だよね?」

「え」

 仲間たちではない、誰とも違う声。
 けれど、呼びかけるそれは、確かに自分へと向けられているものだった。
 そして良く聞いてみれば、どこか覚えのある声でもあって・・・。

「あ・・・まさか」

「そんな・・・」

 ぱくぱくと口を喘がせる熱斗と、動揺して声を震わせているロックマン。2人が呆然とする中、影はゆっくりと歩を進めて互いに顔が見える距離までやってくる。

「ユウコ・・・ちゃん?」

「やっぱり、おにいちゃんたちだ!」

 それは見紛うことなく、かつて彼らが出会った少女。
 ユウコはトコトコと無邪気に歩み寄ると、上目遣いに熱斗を見上げる距離で、可愛らしく首を傾げて。

「久しぶりだね」

 私のこと、覚えてる?
 そう尋ねられ、熱斗もロックマンも思わず反射的に肯定するように頷いていた。


update 2012/07/23
backトップ > ロックマン > エグゼ短編 > 鬼火(3) ※再録 *

since 2006 Sonatine-ソナチネ- Powered by FC2 Blog
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。