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拍手再録-ウサ耳熱斗(6)
6.

 全速力で道を駆け戻る。
 地面を蹴る靴は水を吸ってびしゃびしゃと盛大な音をたて、濡れた服からは雨でもないのにキラキラと雫をはじき、すれ違う人々は怪訝そうに振り返った。
 そんな視線も気にせず、熱斗は一直線に家を目指す。

「ロックマン・・・!」

 先ほどは飛び出したまま開け放たれてた扉をくぐり、投げ出されているPETを手に取った。
 慌てすぎて何度も打ち間違いをしながらも何とかメッセージを送信すると、ほどなくしてロックマンが画面に現れて、その顔を見ただけで熱斗は少しだけ安心した。

「熱斗くん!心配したんだよ、いままでどこに・・・っ」

「それよりもロックマン、大変なんだ!ちびが・・・あいつが!」

 心配して自分を探し回ってくれていたらしく、PETに戻るなり質問を重ねようとしたロックマンの声を遮って叫ぶ。その声に尋常ではない雰囲気を察したのか、すぐに押し黙ったロックマンは「詳しく話して」と説明を求めてきた。
 そんな風にすぐわかってくれるからこそ。
 喧嘩のように言葉を投げつけて飛び出した熱斗に、そんな風に優しく答えてくれる。そんなロックマンの落ち着いた声を聞いていると、じわりと涙がにじみそうになった。
 けれど、こんなところで泣いている場合ではない。

「行きながら話すから」

 そう告げると、今度はPETをしっかりと持って家を出て、熱斗は来た道を全速力で戻り始めた。
 その道の途中で事情を簡単に説明する。
 怒って飛び出した後、草むらに隠れた廃溝に落ちてしまったこと。
 ネットワークも繋がっておらず、連絡もできずに出られなくなっていたことと、水が流れ込んで大変危険な状態になっていたこと。
 そしてどこからか場所を見つけてやってきたらしいチビ熱斗が、電子ロックのかかった扉へ飛び込んで消えてしまったことを、順を追って話していった。

「あいつ、水に触れればデータが消えてしまうの知ってたくせに、飛び込んできて・・・でも、おかげで電子ロックが外れて俺は外に出られたんだ」

 話しながらその情景を思い出していく。
 あのままでは水が増えて、脱出する前に溺れてしまっていたかもしれない。
 扉の電子ロックは旧式で簡単に外すことができただろうけど、プラグインする端子もネットワークへアクセスする端末もそばになく、コンソールも内側からは操作ができない状態だった。
 内部に閉じ込められた熱斗にはどうすることもできなかったのだ。
 そこに、チビはその特殊な能力・・・実体化することにより、ネットワークの無いその場所に現れて、扉へ進入し、おそらく・・・電子ロックを解除してくれたに違いない。

「いつまでたってもあいつ出てこなくて、呼んでも返事がないんだよ!」

 直前に消えかかった姿を見ている。
 水に触れたデータは破損し、それが小さな体にとってどれだけ命とりなことか、わかっていただろうに。
 中で動けなくなっているのだろうか?
 それとも、まさかもう・・・。

「わかった。ボクをプラグインして、ボクが探すから」

 だから安心してと笑いかけるロックマンの表情は僅かに硬い。
 彼もやはり、この状況があまり良いものではないことを理解しているのだ。
 しかしそれを表に出せば余計に熱斗が不安がってしまうだろうと、努めて平静を装っていた。心の中では、部屋を出るときにPCの回線を開いたままにしたことを悔やむ。
 いや・・・そこでチビが外へ出なければ、扉を開けてくれなければ、いまここで熱斗と会話することもできなかったかも知れない。
 何がきっかけとなるかなんて誰にもわからないから、いまのこの状態は誰のせいでもないのだろう。
 しかし、熱斗もロックマンも互いに自分の行動が引き起こした結果を責めずにはいられないのだった。

「頼む、ロックマン!」

 無事でいてくれ、という願いをこめながら外付けされた端末へとPETを差し向ける。
 その願いを聞きながら、ロックマンは同じ気持ちで電子ロックの内部にプラグインした。
 そこは本当に旧式のプログラムで、中は見渡すほどの広さもない。
 降り立ったロックマンは、小さな存在を探すためにぐるりと視線をめぐらせて、程なくして目的のデータを見つけ出したのだった。




***




「これで大丈夫だよ」

 カタ、と最後の実行を送り。
 ふーと腕を伸ばして振り返った人物の笑顔に、緊張して結果を待っていた2人の少年はようやく緊張を解いた。

「ありがとう、パパ!」

「よかった・・・」

 見つめる先にはパソコンの画面には、小さな存在が丸くなって眠っている様子が映し出されている。
 頭には白くて長い耳が一対。
 茶色いふわりとした髪の毛の中で寝息に合わせて揺れていた。

「お前たちが心配してたことだけど、このコはもうデータのほとんどを失っていたからね。研究対象にもされないだろう」

 気にかかっていたことについても、そのように答えをもらって一気に安心する。
 どうにか無事にデータを回収したものの、酷く傷ついていたチビの身体を熱斗だけではどうにもすることが出来ず、科学省へと駆け込んだ。
 2人が泣きそうな勢いで飛び込んできたことに驚き目を丸くしていた祐一朗だったが、すぐに事態を把握すると破損していた部分を補うように復元してくれたのだ。

「元には戻すことはできなかったけれど、一般的なプログラムで補っておいたから。普通に行動するには問題ないはずだよ」

 もともとウイルスだったものなので、ネットナビと同様の権限を持たせることは出来なかったけれど、小さな端末にいれておけば中で活動することも可能である。

「実体化はもうできないだろうけどね」

「十分だよ、パパ、ありがとう!」

 連れ帰ろうとも思ったのだが、結局チビは祐一朗が預かって様子をみてくれることになった。何かあったときにすぐに対応できるし、責任もとれるからと引き受けてくれた祐一朗に再び感謝しながら、毎日様子を見に来る約束をして別れる。
 まだ目を覚ましていなかったけれど、穏やかに眠る小さな体はどこも欠けていなくて、本当に良かったと熱斗は微笑みながら研究室を後にした。

 ほんの少し、やきもちを焼いていたのだ。
 ロックマンがあまりに彼ばかりをかまうから。

「ごめんね、熱斗くん・・・ボク、あんなこと言うつもり・・・」

「うん。正直ショックだったけど」

 興奮したせいで咄嗟に出た言葉とはいえ、心の片隅ででもそんな風に考えていたことを悲しく思う。
 けれど、それを言わせてしまった自分がなによりも嫌だった。

「俺こそ、ごめんな」

 言ってしまったロックマンも同じくらいショックだったと思うから。
 いや。
 優しい彼のことだから、それ以上に自分を責めて、必死に熱斗を探してくれたのだろう。
 呼び出しを受けてすぐに現れたそのときの顔を思いだして、熱斗は小さく微笑んだ。

「ありがとう、ロックマン」

 明日はふたりで、あの小さな恩人へお礼を言いに行きたいね。
 そう囁いて手を繋ぐようにPETを持ちながら、1人じゃない帰り道はとても晴れ上がっていて、温かかった。




***




 ありがとう、熱斗くん。
 途中までしか言えなかったけれど・・・
 あのね?
 ネットの片隅で震えていた、あのコを見つけたとき。
 かわいそうだなと思って拾ったのもあるんだけれど、それよりも。
 キミの姿をしていたから。
 振り返った小さな瞳が、キミと同じ色だったから。
 だからどうしても放っておけなかったんだ。
 とてもとても惹かれたのはそう、きっと。
 あのこが光熱斗だったから、なんだよ。

 たぶんもう話す機会も無いと思うから、この告白は、ここだけの内緒の話。




おわり。
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完結です。ここまでお付き合いくださりありがとうございましたv
始めたときはまさかこんなに長くなるとは思っていませんでした; ちょっとしたアニメ小話のつもりだったので。
予想外に愛着が湧いてしまったこともあり、全6話に。

update 2009/04/10
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